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国分寺の家を出てから約23時間。ようやくヴィリニュスに着いた。乗り継ぎが悪かったので、想像以上に時間がかかってしまった。でも、コペンハーゲンからの飛行機では隣に座ったリトアニア系アメリカ人の科学者と、お互いの国の経済状況や日本におけるアメリカ文化の受容の仕方などを話して盛りあがったので、暇しなくてすんだ。彼の祖母はリトアニアで健在だそうで、彼女に会いに行くのがこの夏のバカンスとのこと。

空港に着くと、リトアニア芸術家協会の担当者が迎えに来てくれていた。彼女のアウディA3はヴィリニュスの旧市街を抜けて、目的地に到着。現代美術センターの隣、市庁舎の前、という空前の好立地。こんなとこ、ホテルでも泊まったことがない。簡単な説明をしてもらった後は、もうとにかくベッドへ一直線。翌日まで11時間、寝っぱなしでした。

朝起きると、街の喧騒が。本当に中心にいるため、2階の窓から外のオープンカフェが見える。夏なのでみんな外へ。やはりヨーロッパですな。簡単に準備をしてから、改めて芸術家協会のオフィスへ。いろいろな展示の情報をもらったり、ギャラリストやアーティストの情報をもらい、さっそく街に出る。まずはせっかくなので、お隣の現代美術センターへ。さわひらき、パラモデル、草間弥生、渡辺剛の4人展。パラモデルは例の青い線路の模型を建物じゅうに張り巡らせてた。外国でも手のかかることをしますなー。草間弥生は黄色地に黒のドットが入ったバルーンを、さわひらきはマルチスクリーンのビデオインスタレーション、渡辺剛はアンドロイドのポートレートを出してました。クオリティも高く、展示自体とてもよかったんじゃないかと思います。

同時にEuropean Eyes in Japanという、ヨーロッパの写真家が日本で撮影した作品を展示していました。リトアニアの写真家、Arturas Valiaugaも展示しており、双方の視点が伺えて面白かったです。

その後、リトアニアの抽象絵画と表現主義のギャラリーに行きました。まあ、多くはエストニアで見たような東欧的な作品が多かったのですが、1982年生まれのAndrius Zakarauskasは、ライプツィヒシューレのような感じもするし、サスナルのようでもありますが、相当いい絵でした。今回のお気に入り。その後、そこのディレクターと会い、ぼくの個人的な視点によるポートレートとスナップによる作品を、リトアニア滞在中に作ることで、Japanese Eyes in Lithuania的な企画として近い将来展示をできないか、という話をいただきました。しかし、不況の真っ只中のリトアニアでは、予算を取るのがほぼ不可能らしく、展示や輸送コストは、日本大使館次第、という感じでした。日本で展示をやるのに比べたらはるかに安く、好条件でできますが、それでもなお、なんらかのサポートがないと無理そうです。1年、2年後を目処に、実現するように動いていくしかなさそうです。

そこで監視バイトをしていた美大生とつい話しこんでしまい、気づいたら2時間以上も受付にいました。彼女がトイレに行ったり、カタログの補充をしている間、ぼくが受付してました。ユルすぎ。素敵。リトアニア人は本当に気さくだし、若い人は英語ぺらぺらだし、とても魅力的です。あと、美しい。ちゃっかり何枚かポートレートも撮りました。残念ながら彼女は明日からバカンスに出てしまうので、ヴィリニュスにはいなくなってしまうそうですが。

それから、若手のペインター8人で共同経営している、ギャラリー兼アトリエを見に行きました。具象の油絵がメインでした。みんな結構厚めに塗る感じで、色調も暗いものが多かったですね。

そこにはまた遊びに来る約束をして、次はリトアニア写真家協会へ。

すでに写真家たちは帰ったあとでしたが、付属のギャラリーにいた女性が、先ほどのValiaugaや若手作家Ugnius Gelgudaの連絡先を教えてくれたので、コンタクトが取れそうです。Gelgudaは白黒、カラー、ポラロイドを使いわけながら、クラブでのスナップや、強力なフラッシュで顔がギリギリ判別できるかできないかという感じのスナップ、さまざまなかたちで同棲する人々をきちんと撮ったポートレート、あるいはセックス産業のビデオ画面の複写(?)のようなものまで、かなり横断的に現代の若者の感じを描いています。しかし、決してドキュメンタリーっぽすぎもせず、どこかセットアップの感じを残してるあたりなど、とてもかっこいいと思います。本人に会えるといいな。結局、写真家協会では協会が出してる年度ごとの写真家紹介カタログ3冊と、Gelgudaのカタログを2冊買ったのですが、おばちゃんがディスカウントをしてくれたおかげもあって、なんと全部で3500円。リトアニア素敵すぎる。その後、カタログがあまりにも重かったので、カフェで一休み。そこのカフェで働いていた子がこれまた極めて親切で、今度ヴィリニュスを案内してくれることになりました。当然モデルにもなってくれるようで、制作に関してもひとまず安心です。少なくとも、今回は来る前にはひとりしか、しかも違う街にしか知り合いがいなかったので、どうしようかなと思っていたのに、ほとんど一日中しゃべってる結果となりました。すばらしい。コーヒーもかなりおいしいのに、ラテが170円と、ヴェローチェもびっくりな価格で大変助かります。

アパートに戻ってカタログをじっくり見たところ、日本とはかなり違う展開を見せてはいますが、クオリティはなかなか高く、おもしろい写真家もそれなりにいることがわかってきました。しかし、ここでも「職業写真家」と「写真を使う美術家」の間には微妙な差異があって、そのへんをどうやりくりしていくか、なかなか難しい問題です。まだ滞在は始まったばかりなので、これから徐々にいろいろな人に知り合うなかで、いいラインを見つけていけたらと思います。

夕食は以前にも行ったことがある、Wok to Walkというヨーロッパでチェーン展開している、中華風の焼きそば屋で。ここのバイトの子とまた話が会ってしまい(工科大学で映像系の学科で勉強しているそう)、今度やはり制作に"協力"してもらえそうです。今回の「Minimissing」のシリーズでは誰かひとりのポートレートではなく、いろいろな人や植物やモノと、私のあいだに生まれる「時間」のようなものを宙吊りにした状態で、どちらかによるのではないかたちで捉えることができるか、という挑戦をしています。こういうアプローチをしていくとどうしてもティルマンス的になってしまいそうですが、一枚一枚の親密度やトーンなどで違いを見せられるといいなと思っています。今回は撮影から展示までかなり時間があるので(展示は12月です)、そのあいだにそれぞれのイメージ同士の関係を探っていけたらいいなと思っています。

permalink  July 30, 2009
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